自動車検査員とは?整備士との仕事内容の違いや資格の取得方法を解説 | 株式会社ダウイン

自動車検査員とは?整備士との仕事内容の違いや資格の取得方法を解説

2022/07/29

「自動車検査員」とは、整備工場で整備を終えた自動車の最終チェックを行う仕事です。整備士と混同されがちですが、法令上検査員の資格を持つ者にしかこの最終チェックは許可されておらず、いわゆる「民間車検場」で重要な役割を担っています。

今回は、自動車検査員とはどのような資格なのか?整備士との違いや、資格の取得方法について解説します。


目次





自動車検査員とは?

自動車検査員とはどのような資格なのでしょうか?まずは基本的な情報をご紹介します。

自動車検査員は国家資格

自動車検査員とは、自動車整備士と同様国家資格です。
点検整備された自動車を検査し、保安基準を満たしていることを証明する「保安基準適合証」を交付することができます。

本来、自動車の検査は国が行うものですが、国内の自動車保有台数は8千万台以上といわれており、これは国の検査機関だけではとても間に合う台数ではありません。

国が民間にこの自動車検査を代行させるため、技術者が国と同程度の検査能力を持っていることを認める国家資格が「自動車検査員」というわけです。
自動車検査員と検査施設を備え、国の指定を受けた整備工場が「指定整備工場」であり、一般的に「民間車検場」と呼ばれます。

「みなし公務員」とは?

自動車が整備不良の状態で公道を走った場合、人命にかかわる重大事故につながる可能性があります。
そのため整備の最終チェックを行う検査員の責任は重大で、検査員は民間人でありながら公務員に準ずる扱いを受ける、いわゆる「みなし公務員」となります。

「公務員に準ずる扱い」とは、例えば検査員は整備や検査などの業務内容について守秘義務が課されること、業務を邪魔された場合は公務執行妨害が適用されることなどが挙げられます。

自動車検査員と整備士の違い

検査員と整備士の一番の違いは、整備後の自動車の検査ができるかどうかです。
自動車検査員の有資格者だけが検査することを認められているので、整備士は検査を行うことはできません。

ちなみに、自動車検査員の資格を取得するには最低でも自動車整備士2級以上の資格が必要になります。
つまり、検査員の資格を持っている整備士は、整備と検査を兼務することが可能です。
ただし自分で整備した自動車の検査を行うことは禁止されています。



自動車検査員の需要、給与は?

自動車の整備工場には「認定整備工場」と「指定整備工場」の2種類があります。
「指定整備工場」は一般的に「民間車検場」と呼ばれており、自動車の整備から検査までを自社で行うことが認められている整備工場です。
整備から検査まで一貫して行うことで車検にかかる時間を短縮し、いわゆる「一日車検」などのサービスを提供できるのが指定整備工場の強みといえます。

「指定整備工場」として国から指定を受けるためには、最低1名の自動車検査員の選任が必要です。
また、大規模な指定整備工場ほど整備する自動車の台数も多く、整備士だけでなく検査員も人数が必要となります。

以上の事から、自動車検査員は指定整備工場での需要が高い資格といえるでしょう。
検査員には資格手当などがつくことが多く、地域や企業によりますが整備士よりも給与は高くなる傾向があります。

▶指定工場と指定工場の違いについてはこちら




自動車検査員の仕事内容

自動車検査員の仕事内容は、主に以下のようなものがあります。

完成検査

整備が完了した自動車の検査を「完成検査」といい、点検項目をもとに車検の保安基準を満たしているかをテスターや計測機器でチェックしていきます。

検査書類の作成、管理

完成検査が終了したら、保安基準を満たしていることを証明する「保安基準適合証」を作成します。
また、車両や検査に関わるすべての書類を厳重に保管・管理する役割もあります。

設備の点検、管理

整備、検査が適切に行えるよう、事業場内の設備の点検、管理を行うことも自動車検査員の仕事の一つです。
設備に故障や不備が見つかった場合、管理責任者へ速やかに報告します。

現場の管理、指導

検査が円滑に進むよう他の作業員に適切な指示出しや、後輩検査員の育成指導なども経験を重ねていくと任されるようになるでしょう。

必要知識の習得

自動車の技術は日々進歩しており、保安基準も常に改訂されていきます。
自動車検査員の資格は取得して終わりではなく、常に最新の知識、技能の習得に努めなければなりません。


 

自動車検査員の資格を取得するには?

自動車検査員は国が行う検査を代行する重要な責任がある資格で、その分需要も高い仕事ということがわかりました。
次は、自動車検査員の資格取得に必要な情報をご紹介します。

受験資格

自動車検査員の資格は、自動車整備振興会が実施する「自動車検査員教習」を受講し、修了試験(試問)に合格する事で取得できます。
ただし、教習に参加するためには最低でも自動車整備士資格2級以上を保有していなければなりません。
そのうえで、地方により条件が若干異なりますが、以下のような条件を満たしている必要があります。
 

  • 教習開始日の前日までに整備主任者として1年以上の実務経験がある。
  • 直近の整備主任者研修を受講している。
  • 指定整備工場(または指定を受ける予定の工場)で勤務している、または勤務予定である。

資格取得までの流れ

受験資格を満たしたうえで、資格取得までの流れは以下のようになります。
なお、開催時期などは地方、年度ごとに異なりますので、受講を希望する地域の情報をご確認ください。
 

  • 簡単な基礎工作申込(教習開始の約2か月前)
  • 自動車検査員教習(4日間)
  • 修了試験(試問)実施
  • 修了試験(試問)合格
  • 自動車検査員教習修了証の交付(合格の約2か月後)

​​​​​​試験内容

自動車検査員教習の内容は、主に以下の2つに分けられます。
 

  • 法令に関する内容(道路運送車両法などの基礎法令、整備関連法令、検査関連法令)
  • 検査の実施に関する内容(検査用器具の取扱い、検査の実施方法など)

修了試験(試問)の出題形式は選択式です。
回答を選択するために計算を伴う問題もありますが、いずれの問題も教習内容に基づいて出題されます。

試験の合格率

試験の合格率は公式に発表されていませんが、おおむね50%以上といわれています。
国家資格試験の中では比較的合格率が高い資格といえます。

ただし、受講する地方や法令変更の時期などにより出題難易度が異なり、合格者が極端に低い年もあったようなので、油断せず講習で受けた内容を勉強する必要があります。

受験費用

教習を開催する地方により受験費用は異なりますが、教材費などでおおむね15,000円程度かかることが多いようです。
詳しくは受講を希望する地方の情報をご確認ください。


 

資格取得後の働き方

「指定整備工場で勤務している」ことが教習の受講条件になるので、現在整備士として勤務している会社で資格取得し、その後整備と検査を兼務もしくは検査業務をメインに作業するという流れが多いようです。

また、自動車整備士の求人には自動車検査員の資格が募集条件に含まれるものもあります。
企業によって任される業務範囲が異なるので、自分が目指す働き方に合った会社を選ぶことも可能です。



まとめ

自動車検査員は、国が行う自動車検査の一部を代行する重要な役割を担っています。
資格取得には整備士としての十分な知識と実績が求められますが、その分現場からのニーズも高い資格といえます。

整備士の経験を生かして給与をアップさせたい、新たなスキルを身に着けたいという方は、自動車検査員の資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。